【Summicron50/2】

「空気さえ写る」で名高いこのレンズが送られてきた
オークションで購入、映りが今一つとのことでオーバーホールの依頼を受けた

1959年、アサカメ連載の「ニューフェース診断室」でテストした当時は解像力があまりにも高すぎて、測定不能となったなる逸話が残されている
このときに測定されたのは「1mmの中に何本線が入るか」という「中心解像度」の値で
結果は「280本以上」(絞り開放時)というもの
これはあくまで投影テスト
ならばと思いきやMTF測定をすることに
測定器の関係上像高10mmまでの測定となるも結果はご覧の通り

今と違い計算機も自動設計もない時代(1953~1958年)に設計者のウォルター・マンドラー(Walter Mandler、1922〜2005年)はどれだけの時間をかけ設計したのだろう
この値は立派なもの
ガウスタイプの前群を貼合わせとせず設計の自由度をもたせペッツバール和を抑えることに成功
それでもガウス特有のコマフレアが残り結果「空気が写るレンズ」を生んだのか
前群のレンズス割が悪く修正をすることにより画質は改善
改善後のMTFは忙しさにかまけとらずじまい
でも実写からして向上していることは間違いなく

近年オールドレンズが再燃しているのはいろんな理由があり
・昔の硝子は鉛が入っていて透過率がよく結果「抜け」がいい
・昔のレンズの方が今の画像処理依存レンズと異なり光学設計が真面目にされている
などの理由があるが
今の人はそんな理由もなくただ「流行りだから」「渋いから」「誰誰が持っているから」なのかもしれない
何を撮るのかわからないがレンズの特徴を引き出した情景を映してほしいもの
誰が映しても同じ写真に写るカメラメーカが銀塩カメラの製造を中止した
すべて画像処理に頼っては光学設計技術が衰退して逝く
これ哀しきこと

いつか機会があればズミクロンを分析しては復刻版を作ってみたい

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